キクチ ケン   Kikuchi Ken
  菊池 賢
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   教授
言語種別 日本語
発表タイトル 感染性心内膜炎発症機構におけるStreptococcus sanguinis多糖抗原の関与
会議名 第50回レンサ球菌研究会
主催者 大澤 朗
学会区分 国内学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者菊池 賢、水島 遼、板倉 泰朋、井口成一、吉田 敦、
鎌田啓祐、鵜澤 豊、荒井裕子、秋山 徹、梅村 純、高梨秀一郎
発表年月日 2018/06/16
開催地(都市, 国名) 兵庫県神戸市
学会抄録 第50回レンサ球菌研究会開催プログラム抄録集 29
概要 【目的】感染性心内膜炎 (IE) は長期の抗菌薬投与や症例によっては弁置換術などの外科処置を必要とし、死亡率も高い難治性感染症の代表である。IEの起因菌として、我が国で最も分離頻度の高い菌は、依然、口腔内の常在菌であるviridans group streptococci (VGS) であり、ハイリスク患者の観血的歯科処置では抗菌薬の予防投与が行われている。VGSは口腔内の常在菌であり、口腔がその主な供給源であると考えられている。しかし、抜歯などの観血的歯科処置のみならず、歯磨きや咀嚼などの日常生活でも一過性の菌血症を起こすにもかかわらず、IE発生頻度がそれほど高くない理由はよくわかっていない。
 これまでに、Streptococcus mutansやStreptococcus suisでは常在部位由来株比べ、IE由来株では頻繁に糖鎖抗原(莢膜)変異(脱落など)が認められることが報告されている。その理由は明らかではないが、糖鎖抗原は肺炎球菌などのワクチンターゲットであり、抗体産生による感染防御の良い標的になる。IEでは常時血液に曝され、宿主の防御機構から逃れて心内膜に定着するためには、宿主に認識されにくい糖鎖抗原に変化することが必要だったと想定される。本研究では同様の現象がIEの起因菌として頻度の高いStreptococcus sanguinisにもみられるか検証した。
【方法】 当科の保存S. sanguinisより、IE由来43株、健常成人口腔由来16株、その他の感染症由来6株の計65株を使用した。S. mutansの莢膜多糖抗原(ラムノース糖鎖抗原)生成遺伝子群のホモログであるrgp operon、別のガラクトースーN-アセチルグルコサミンーグルコースにラムノース側鎖のついた糖鎖抗原であるcoaggregation receptor polysaccharides (RPS) 生成遺伝子群であるrps operonについて、long PCR-direct sequenceを行い、SNP, 遺伝子の脱落・欠失・挿入等の変化を調べた。また、このうちの口腔由来1株、IE由来3株、IE以外の敗血症1株の5株の全ゲノム解析を行った。
【結果と考察】 rgp operonは最初の2-3のglycosyltransferaseの遺伝子構成からATCC 10566Tをプロトタイプとするtype 1とSK36をプロトタイプとするtype 2に分かれていたが、それ以外の11遺伝子の保存性は極めてよく、non-sense terminationもみられなかった。IE由来株ではtype 1が60%を占め、口腔由来株ではtype 2が逆に最も多かった。rgpA, rgpB以外の遺伝子が欠落した株はIEでは5株(12%)にみられたが、口腔由来株では1株に留まっていた。rps operonでは由来別による差は明らかではなかった。Gene Bankに登録されているゲノム情報を加えてIE由来9株、口腔由来13株のゲノム比較を行うと、IE由来株では1株平均66カ所に対し、口腔由来株では1株平均30カ所と、IE由来株で有意にCDSのterminal codon出現が認められた。以上のことからIEを発症に関わる因子は複雑で、遺伝上のいくつかの要件が複合していることが示唆された。