キクチ ケン   Kikuchi Ken
  菊池 賢
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   教授
言語種別 日本語
発表タイトル 周術期における感染予防 —起因菌側から考える新たな視点—
会議名 第23回集中治療医学会間等甲信越地方会
学会区分 国内学会
招聘 招聘
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(指名)
発表者・共同発表者◎菊池 賢
発表年月日 2014/08/23
開催地(都市, 国名) 東京
概要 Listerによる外科手術時の石炭酸噴霧での感染予防から150年が経とうとしている。外科手術時の感染が術者の手を介して起こっていることは常識となり、予防の為の手洗い、使用する消毒薬など基本的な方法はほぼ確立した。局所への抗菌薬散布、抗菌薬含有手術器材など、評価の定まらないままに用いられている慣習的な手法もあるが、周術期に用いる抗菌薬の種類、投与時期、投与期間など概ねガイドラインが作成され、施設が遵守しているかどうかは別として、一応のコンセンサスが得られている。血糖、体温、SpO2などの全身管理の術後感染発症に及ぼす影響の研究もこの10年の間に大分進んだ。それでは、周術期の感染予防でこれ以上、取り組むことはないのだろうか。
 多くの無菌手術の場合、術後感染で実際に問題となるのは主に皮膚常在菌が多い。黄色ブドウ球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌などのブドウ球菌の比率は高く、主に皮膚切開に伴って侵入すると考えられている。また、黄色ブドウ球菌は鼻前庭に特に保菌していることが多く、除菌による術後感染防止の是非が議論されている。
 我々は1年間榊原記念病院心臓外科手術1200例の術前の口腔、鼻腔常在菌叢のチェックを行い、黄色ブドウ球菌保菌者から、実際に黄色ブドウ球菌感染が起きているかどうか、前向き調査を行った。その結果、MSSA感染では14例中7例が同じ菌を保有する保菌者から発症していたのに対し、MRSA感染では保菌者からの発症は11例中2例に留まっており、MRSAよりもMSSAで内因性感染の関与が高いことが示唆された。今回の検討は鼻腔、口腔の常在菌調査のみであり、皮膚切開部の常在菌叢を調べている訳ではないので、これで全てが言える訳ではないが、榊原記念病院での術後感染の起因菌の多くはMSSAであることを考えると、MRSAよりもむしろMSSA保菌制御をすることが術後感染予防につながるのではないかと考えている。一方、MRSA感染は外因性感染の可能性が高く、近年のMRSAの遺伝的背景の多様化などを鑑みると、現在の周術期の感染予防法を見直す時期にあるかも知れない。
 これまで本邦ではほとんど検討されていない、黄色ブドウ球菌ワクチンや常在菌叢保持による黄色ブドウ球菌定着を防ぐ手段についても、本パネルディスカッションで紹介してみたい。