カワマタ タカカズ   KAWAMATA Takakazu
  川俣 貴一
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   教授・基幹分野長
言語種別 日本語
発表タイトル 代謝物から検討した髄膜腫の悪性化機序
会議名 日本脳神経外科学会第80回学術総会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(公募)
発表者・共同発表者◎江口盛一郎, 松岡剛, 川俣貴一, 財津桂
発表年月日 2021/10/28
開催地
(都市, 国名)
神奈川県横浜市
開催期間 2021/10/27~2021/10/30
概要 【目的】脳腫瘍のゲノム解析が進み, 髄膜腫においても複数の遺伝子変異が報告されている。悪性化に関与する遺伝子の報告もあるが, 遺伝子に生じた変異は必ずしも腫瘍の表現型に現れるわけではない。そこで, 本研究では腫瘍の表現型に直結するメタボライツに注目し, 悪性度の異なる髄膜腫間で代謝プロファイルを比較することで, 悪性化に関与する代謝経路の検証を行った。
【方法】2014年1月から2020年8月の期間に当院で摘出術を施行した髄膜腫症例を対象とした。腫瘍検体は採取後, 代謝物の変化を抑えるため液体窒素を用いて速やかに凍結を行い, その後マイナス80度のDeep freezer内で凍結保存した。凍結保存中の腫瘍検体50検体(WHO gradeの異なる3群, Meningothelial(G1): 20, Atypical(G2): 20, Anaplastic(G3): 10)に対して, 探針エレクトロスプレーイオン化法(PESI/MS/MS)を用いて解析を行った。解糖系/TCA回路/β酸化経路/尿素回路/メチオニン代謝経路などに関与する72成分の代謝プロファイリングを行い, 統計ソフトRを用いて多変量解析を行った。
【結果】多変量解析で群分離を行うと, 3群の代謝プロファイルには明確な相違が認められた。PLS-DA score plotsからは, 3群は異なる軸方向に分離され, G1からG2, G3への代謝プロファイルの変化は非連続であることが確認された。また, 同じG2群の中でも代謝プロファイルが明らかに異なる亜群(G2m)の存在が確認され, G1と比較するとG2mではTCA回路の, G3では脂肪酸代謝の亢進が確認された。
【考察/結論】髄膜腫の悪性化はG1からG2を経てG3へと段階的に起こると考えられていたが, AtypicalとAnaplastic meningiomaは神経膠腫におけるAstrocytomaとOligodendrogliomaのように別系統の腫瘍である可能性が示唆された。本結果をもとに, 今後ゲノム解析なども加味してさらに検討していきたい。