ヤマザキ ケンジ   KENJI YAMAZAKI
  山崎 健二
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   客員教授
言語種別 日本語
発表タイトル 人工心臓―最新の話題
会議名 日本医工学治療学会第33回学術大会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 特別講演・招待講演など
発表者・共同発表者◎山崎健二
発表年月日 2017/04/09
開催地
(都市, 国名)
島根県松江市
学会抄録 日本医工学治療学会第33回学術大会 抄録集 32, 47
概要 *教育講演
 2016年次のINTERMACS最新レポートによると、米国では年間約3000例の新規植込みがあり、累計18000例が登録された。LVAD適応はBTT25.7%, BTC27.9%, DT45.4%と心臓移植を前提としないDestination Therapy目的が最も多い治療カテゴリとなっている。術前の重症度は、INTERMACS profile 2-3が最も多くを占めている。全体の生存率は、1年79.1%、2年68.0%、3年57.5%、4年47.8%であった。死因は上位から、脳神経障害19.3%、多臓器不全16.1%、補助中止9.3%、感染症8.6%、呼吸不全5.0%、右心不全4.1%、等であった。適応別生存率は、BTT:1年84.7%, 2年76.7%, DT: 1年76.6%, 2年63.4%と約10%程度DTで劣っていた。LAVDの生存率は1年81.4%、2年70.3%であるのに対し、BVADは1年54.9%、2年48.6%と不良であった。
 磁気浮上型遠心ポンプHeartMateⅢの多施設治験MOMENTUM3での50例の植込み結果が報告され、6ヶ月時点で生存率92%、有害事象は出血38%、感染症36%、脳神経障害12%、右心不全10%であったが、装置故障、デバイス血栓症、溶血は無かった。
 本邦において植込型補助人工心臓実施施設は全国で42施設となり、4機種で総計600例を超える植込型LVADが装着された。1年生存率93%、2年生存率89%と非常に良好な成績を上げている。HeartMateⅡを用いたDT治験も進行中である。小型化されたEVAHEARTⅡは前臨床試験が完了し、本年度中に承認申請の見込みである。
 VAD治療においては、感染症(ドライブライン感染、ポケット感染、敗血症、縦隔洞炎、等)、心不全(ポンプ機能不全、右心不全)、装置故障(ポンプ、コントローラ)、デバイス血栓、溶血、不整脈、多臓器不全(肝、腎、肺、等)脳神経障害(脳梗塞・脳出血)、等従来の合併症他、消化管出血、大動脈弁逆流のように連続流LVAD特有の合併症が問題となっている。大動脈弁閉鎖不全症は、大動脈弁に開放がみられる症例では逆流回避率が高く、大動脈弁が閉鎖位で固定している症例では逆流回避率が低いと報告されている。中等度以上の大動脈弁逆流を来した事例では、弁尖の縫合閉鎖、大動脈弁置換(生体弁)に加え、ステントバルブ(TAVI)の症例報告もある。BSA≤1.5㎡の小柄な患者では出血とドライブライン感染症は多かったものの、右室不全や腎機能障害は少なく、生存率に有意差はなかった。軸流ポンプでデバイス血栓のためポンプ交換を要する症例が2年で12.3%と報告されたが、その後血栓回避の改良プロトコールによるPREVENT多施設試験において6ヶ月時点におけるデバイス血栓症を1.9%へ改善した。消化管出血は、高いせん断応力による von Willebrand因子の障害と、連続流による脈圧の低下が関連しており、機序の解明が進んでいる。これらの有害事象を改善することが補助人工心臓普及の鍵となろう。