アヅマ タカシ   AZUMA Takashi
  東 隆
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   講師
言語種別 日本語
発表タイトル 僧帽弁弁尖を切除しない僧帽弁後尖形成術後の長期成績:術前拡張機能障害の影響
会議名 第72回日本胸部外科学会定期学術集会
主催者 日本胸部外科学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎齋藤博之, 新浪博士, 齋藤聡, 新川武史, 菊地千鶴男, 市原有起, 道本智, 東隆
発表年月日 2019/11/01
開催地
(都市, 国名)
京都市
概要 *一般口演 42
僧帽弁 2

【目的】当科では後尖病変を有する僧帽弁閉鎖不全症(MR)手術術式として逸脱または腱索断裂を来した過分弁尖を左室側へ折りたたみ僧帽弁弁尖を切除しない(non-resectional McGoon法)僧帽弁形成術(MVP)を積極的に適応してきた。今回長期成績を検討するとともに術前左室駆出率が保たれた(LVEF > 50 %)症例のうち拡張機能障害の有無による術後心機能の比較検討をおこなった。

【対象と方法】 2007 年 1 月から 2016 年 12 月までの 10 年間に当科にて施行した 130 例の non-resectional McGoon 法による後尖病変に対する MVP を対象とした。遠隔成績として心血管事故(MACCE)の発生を検討した。また術前 LVEF > 50 %の症例(HFpEF)を心エコーで得られた左室流入血流速波形/僧帽弁輪部拡張早期波比(E/e’), 中隔側・側壁側 e’, 左房容積係数(LAVI), 三尖弁逆流速度(TRV)により判定した拡張障害の有無で 2 群に分け術後遠隔期の心エコー検査結果を比較検討した。

【結果】観察期間中央値は 1516 日、男 80 例(61.5 %)、手術時平均年齢 61.1 歳であった。術前心エコー評価にて中等度 MR は 35.1 %、重症 MR は 59.5 %だった。術前 LVEF は 56.1 ± 6.6 %、左室収縮末期径(LVDs)は 38.0 ± 6.4cm だった。人工弁輪は主に Physio II を用いた。遠隔死亡 4 例中 3 例は癌死で 1 例に脳梗塞を認めた。再手術は 5 例に認め MR 再発 3 例、人工弁輪による溶血 1 例、左房粘液腫による再手術 1 例であった。脳血管障害は 3 例に認めた。カプラン・マイアー生存曲線による MACCE 回避率は 1 年 99.2 %, 3 年 97.5 %,7 年 82 %であり中等度以上の MR 再発回避率は 1 年 99.2 %,3 年 96.2 %,7 年 94.3 %であった。HFpEF のうち術前拡張能障害を有する症例は 26 例であった。術後早期では術前と比較し EF が低下(P < 0.05)したが LAVI は術後早期より有意差を持って改善(P < 0.05)し遠隔期には EF は正常化し LAVI の持続的な改善(P < 0.05)を認め拡張障害が改善する傾向にあった。

【考察】 non-resectional McGoon 法によるMVP の長期遠隔成績は良好であった。術前に拡張障害を認める HFpEF では術後早期より LAVI は改善し遠隔期にも維持されており本術式により持続的に拡張機能障害の改善が得られる可能性がある。