ドウモト サトル
  道本 智
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   講師
言語種別 日本語
発表タイトル 右鎖骨下動脈起始異常を伴う感染性弓部大動脈瘤に対し,開窓型ステントグラフトを用いて頸部4分枝を温存し TEVAR を施行し得た 1 例
会議名 第47回日本血管外科学会学術総会
主催者 日本血管外科学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 ポスター掲示
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎中前亨介, 磯村彰吾, 東隆, 横井良彦, 道本智, 新浪博士
発表年月日 2019/05/24
開催地
(都市, 国名)
愛知県名古屋市
概要 [背景]右鎖骨下動脈起始異常は先天性の弓部分枝の発生異常であり,これを伴う弓部大動脈瘤や大動脈解離に対する報告は散見されるのみであり,手術方針や予後に関して一定の見解はない.従来の治療法は,正中創からの開胸手術のみでは,その解剖学的特徴から外科的アプローチが難しく,debranching TEVAR やコイル塞栓術を組み合わせたものがしばしば行われており,ステントグラフト内挿術のみで頸部4分枝を温存し得た報告は未だない.今回我々は,右鎖骨下動脈起始異常を伴う感染性弓部大動脈瘤に対して,開窓型ステントグラフトを用いて頸部4分枝を温存し TEVAR を施行し得た 1 例を経験したので報告する.
[症例]69 歳男性,心房細動,慢性腎不全,脳梗塞後で右不全麻痺の既往をもつ.高度炎症反応と CT で大動脈弓部に辺縁粗造な最大短径 70mm の嚢状瘤を認め,右鎖骨下動脈は遠位弓部大動脈の背面より起始し,食道背側を回り右腋窩動脈へつながっており,右鎖骨下動脈起始異常を伴う感染性弓部大動脈瘤の診断で当院紹介となった.血液培養から G 群β-Streptococcus が検出され,血液培養陰性化と炎症反応低下を確認後,Frality が高く開心術がハイリスクであったため,開窓型ステントグラフト(Najuta)による TEVAR を施行する方針となった.手術は全身麻酔下に,右大腿動脈,両上腕動脈および左総頸動脈アプローチで行った.術前 CT に基づき Najuta をオーダーメイドで 4 カ所開窓した.まず Najuta の reinforcement のために TX2(38 mm)を遠位弓部大動脈~下行大動脈へ留置した後,開窓した Najuta をTug of wire 法を用いて留置した.続いて,左総頸動脈・左鎖骨下動脈,右鎖骨下動脈にそれぞれ 11 mm ×5 cm,13 mm ×10 cm,13 mm ×10 cmの Viabahn を留置し,PTA バルーンを用いて圧着し,手術を終了した.術後の造影 CT で,Najuta と TX2 の接合部より type3 エンドリークを認めたため,術後19 日目に同部位へ TX2(42 mm)で追加 TEVAR を行った.同時に,Type2 エンドリークの予防目的に,右総頸動脈に 8 mm ×5 cm の Viabahn を留置した.初回手術後 67 日目に施行した造影 CT でエンドリークを認めず,炎症反応の再燃も認めなかった.
[結語]右鎖骨下動脈起始異常を伴う感染性胸部大動脈瘤に対し,開窓型ステントグラフトを用いて頸部4分枝を温存し TEVAR を施行し得た1例を経験した.頸部分枝に対する開窓をオーダーメイドで行い,エンドリークの予防目的に各分枝にViabahn を留置することで,鎖骨下動脈起始異常を伴う症例においても,頸部 4 分枝を温存した TEVAR は施行可能だった.