ドウモト サトル
  道本 智
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   講師
言語種別 日本語
発表タイトル 傍腎動脈型腹部大動脈瘤 (PAAA) に対する Total endovascular repair 戦略の変遷
会議名 第47回日本血管外科学会学術総会
主催者 日本血管外科学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(公募)
発表者・共同発表者◎磯村彰吾, 東隆, 横井良彦, 道本智, 新浪博士
発表年月日 2019/05/23
開催地
(都市, 国名)
愛知県名古屋市
概要 【目的】 PAAA に対するステントググラフト内挿術 (EVAR) では腎動脈起始部を超えた中枢ランディングゾーンが必要である。chimney 法(c-EVAR)、fenestrated EVAR(f-EVAR)、branched EVAR(b-EVAR) など多様な分枝再建法が存在するが本邦では使用可能なデバイスに制限がある。当院では歴史的な変遷から c-EVAR、医師改良開窓デバイスによる(physician made endograft(PMEG))f-EVAR からはじまり、VIABHAN(ゴア社) の承認を期に PMEG を用いた b-EVAR を主な治療方針としてきた。
【方法】 PAAA に対し 2000 年1月から 2018 年 11 月までに 90 例(全腹部大動脈手術 702 例中 12%)の治療を経験し内 30 例(33.3 %)で EVAR を施行した。EVAR 手技詳細は c-EVAR 8 例、f-EVAR 13 例、b-EVAR 8例、片腎動脈単純閉鎖1例であった。EVAR 全体の成績および b-EVAR を B 群、その他を C 群に分類し b-EVAR の治療成績を比較検討した。
【結果】 EVAR 全体の成績は平均年齢 76.9 ± 6.3 歳、術前腹部大動脈最大短径は 51.1 ± 9.3mm、開腹手術が困難な症例は動脈瘤の解剖にかかわらず EVAR の適応とした。手技成功率は 30/例(93.8 %)であり術後合併症は 2 例(6.7 %)(AKI 1 例、グラフト脚狭窄1例)、30 日死亡は認めなかった。 平均観察期間は 28.5 ± 26.1 ヶ月で全体では 1 年生存 94.7 %、3 年生存率 80.0 %、大動脈関連イベントの発生は 5 例(15.6%)で治療法別に f-EVAR 3 例、c-EVAR 1 例、腎動脈単純閉鎖1例であった。内訳は Type II Endoleak(EL) 1例、Migration による Type III EL 1 例、Type Ia+III からの AAA 破裂1例、突然死1例、その他1例であった。全体の大動脈関連イベント回避率は 1 年 100 %、3 年 71.4 %であった。手技別の B/C 群でみると平均年齢 78 ± 2.3/75.6 ± 1.3 歳、大動脈瘤最大短径 48.5 ± 3.3/52 ± 2.0mm、手技成功率は 100/ 91.7%、介入分枝数は 1.75 ± 0.3/1.4 ± 0.1 本(b-EVAR の分枝再建には主に VIABAHN を使用)、平均手術時間は 198.5 ± 17/195.5 ± 10 分、周術期合併症は 0/2 例とどれも有意差を認めなかった。
【結語】 PAAA に対する EVAR では chimney や開窓のみでは遠隔期の EL や Migration が散見され、その結果を受けて b-EVAR の治療に移行してきた。近年は小口径ステントグラフト(SG)の登場により b-EVAR が可能となり高い手技成功率と低い早期合併症率を認めることから有用な治療法と考えられた。分枝用のポートには我々の考案したハイドロゲルポートを用い自己拡張型小口径 SG である VIABHAN と併用することで早期の開存率は優れた結果であった。中長期でのグラフト閉塞や EL、Migration は不明であるため綿密な経過観察が必要と考える。