アラシキ ノブト   ARASHIKI Nobuto
  新敷 信人
   所属   医学部 医学科
   職種   助教
言語種別 日本語
発表タイトル 脂質過酸化によってバンド3タンパク質に生じるメトヘモグロビンとの結合様式の変化のメカニズム
会議名 日本膜学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者新敷信人, 萬野純恵, 高桑雄一
発表年月日 2013/05/20
開催地
(都市, 国名)
東京都
学会抄録 日本膜学会第35年会講演要旨集 57
概要 【背景と目的】赤血球は120日で寿命を迎え、脾臓のマクロファージで除去される。この際、赤血球膜タンパク質バンド3 (Band 3) のクラスター化が引き金となるが、その過程について、これまで、脂質過酸化によって赤血球膜上のBand 3とMetHbの結合が強まり、さらに正の協調性をもって次々と結合することでBand 3を架橋することが、クラスター化を促進する一要因となっていることを示してきた。本研究では、Band 3とMetHbの結合様式の変化について、精製Band 3細胞質ドメインおよび部分ペプチドを用いて結合実験を行い、そのメカニズムを解明することを目的とした。

【方法と結果】まず、Band 3の細胞質ドメインを脂質過酸化剤 (tert-Butyl hydroperoxide: t-BHP) 処理した、またはしない膜から精製し、ともにダイマーとして得た。これらをそれぞれ水晶発振センサー上に固相化した後、MetHbを添加することによって減少する振動数つまり、両者の特異的結合を観察した (Quartz Crystal Microbalance (QCM) 法)ところ、t-BHP (+) Band 3において、これまで反転膜小胞 (IOV) でも認められていた正の協調性および最大結合量の増加が弱いながらも観察された。次に、この測定系にMetHbとの結合部位と報告されている12-23番目の12アミノ酸残基からなるBand 3の部分ペプチドを添加し、両者の結合の阻害実験を行ったところ、t-BHP (-) Band 3へのMetHbの結合は阻害され、t-BHP (+) Band 3への結合は阻害されたもののその効果は弱く、また、正の協調性が失われ、単純飽和の結合へと変化した。

【考察と結論】脂質過酸化によって生じるBand 3とMetHbとの正の協調性をもった特徴的な結合は、細胞質ドメインのみでかつ、少なくともダイマーの状態で起こりうるが、IOVで認められた協調性よりも弱いことから、膜内でBand 3が自由に拡散することでより効果的に協調性を発揮できているのではないかと考えられた。また、部分ペプチドによる結合阻害実験から、脂質過酸化の影響を受けたBand 3には12-23アミノ酸残基以外にもう一つ別の結合部位が存在し、分子内で両者の結合部位に結合することが正の協調性を発揮するのに重要であると考えられた。