アラシキ ノブト   ARASHIKI Nobuto
  新敷 信人
   所属   医学部 医学科
   職種   助教
言語種別 日本語
発表タイトル 脂質過酸化で生じるバンド3タンパク質のカルボニル化によるメトヘモグロビンとの結合の変化
会議名 日本膜学会第34年会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎新敷信人, 萬野純恵, 高桑雄一
発表年月日 2012/05/08
開催地
(都市, 国名)
東京都
学会抄録 日本膜学会第34年会講演要旨集 51
概要 【背景と目的】赤血球は120日で寿命を迎え、脾臓のマクロファージで除去される。この際、赤血球膜タンパク質バンド3 (Band 3) のクラスター化が引き金となるが、その過程について、昨年の本会で、脂質過酸化によって赤血球膜上のBand 3へのMetHbの結合が強まりBand 3を架橋すると同時に、アンキリンとの結合が弱まりBand 3の可動性が増加することがBand 3のクラスター化を促進する要因となっていることを示した。本研究では、脂質過酸化によりBand 3の細胞質ドメインがカルボニル化されることでこれらの分子間相互作用に影響を与えているとの仮説を検証した。

【方法と結果】まず、赤血球膜ゴーストに対する脂質過酸化剤 (tert-Butyl hydroperoxide)処理によって、Band 3に生じうる修飾を検討した。その候補として、脂質過酸化二次生成物である4-Hydroxy-2-nonenal (HNE) およびMalondialdehyde (MDA)、ならびにアミノ酸残基のカルボニル化を挙げ、これらをそれぞれ認識する抗体を用いたImmunoblotで検出したところ、Band 3のカルボニル化のみが脂質過酸化剤処理によって生じた。さらに、この膜ゴーストをa-Chymotrypsin処理することにより、カルボニル化はBand 3の細胞質ドメインに起こっていることが示された。次にBand 3の細胞質ドメインを脂質過酸化処理した、またはしない膜から精製し、Lysyl endopeptidaseおよびTyrpsinによる消化パターンを、HPLCを用いて比較したところ、Trypsin消化産物でのみパターンが異なっていた。最後に、これらの精製Band 3細胞質ドメインとMetHbとの結合をBlue-Native PAGEによって解析したところ、Band 3 : MetHb = 1 : 1の結合と、Band 3とMetHbの多量体が検出され、その量は脂質過酸化膜から精製したBand 3においてより多かった。

【考察】脂質過酸化によって、Band 3の細胞質ドメインにカルボニル化が生じており、ペプチダーゼによる解析からリジン残基よりもアルギニン残基がカルボニル化を受けていることが推察された。また、カルボニル化によって、膜という場がなくてもBand 3とMetHbの結合が強くなり、かつ多量体化 (クラスター化) しうると考えられた。