アラシキ ノブト   ARASHIKI Nobuto
  新敷 信人
   所属   医学部 医学科
   職種   助教
言語種別 日本語
発表タイトル 老化赤血球におけるバンド3タンパク質のクラスター化のメカニズム
会議名 日本膜学会第32年会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎新敷信人, 萬野純恵, 高桑雄一
発表年月日 2010/05/14
開催地
(都市, 国名)
東京都
学会抄録 日本膜学会第32年会講演要旨集 51
概要 【背景と目的】赤血球は酸化ストレスに曝されながら体内を循環し、老化して120日経つと脾臓のマクロファージに捕らえられる。この寿命を規定する機構のひとつとして、膜を貫通するバンド3タンパク質 (Band 3) のクラスター化と、それを認識する血清中の自然抗体との反応によるオプソニン化が考えられている。しかし、Band 3がクラスター化する機序については不明である。本研究では、1) 老化赤血球では酸化ストレスによりHbからMetHbが生じやすくなる、2) 過酸化した膜に存在するBand 3にMetHbが強く結合し、Band 3のクラスター化を誘導する、との仮説を時系列に従って検証し、老化赤血球におけるBand 3クラスター化のメカニズムの解明を目的とした。

【方法と結果】密度勾配遠心法にてヒト静脈血から得た赤血球を、比重の小さい若いほうからF1~F6に分画した。赤血球中のMetHbは、F1~F4では1%前後と正常値範囲内であったが、F5では約2.5%、F6では約3.5%と有意に増加していた。また、Band 3の自然抗体を用いたFACS解析により、F6 (全赤血球の約0.1%) の約20%でBand 3のクラスター化が検出された。次に、MetHbによるクラスター化の誘導を意図して、各分画毎にHbまたはMetHb (K3Fe(CN)6により作製) を再封入した膜ゴーストを作製した。FACS解析の結果、F6では両者で、F5ではMetHbでのみBand 3はクラスター化したが、他の分画ではいずれも認められなかった。分画した赤血球にあらかじめ過酸化剤 (tert-butyl hydroperoxide) を作用させると、F1~F4においてもMetHbによりクラスター化が誘導された。これらのクラスター化Band 3は、Blue-Native PAGEにおいても、高分子量領域のシグナルとして検出された。さらに、Band 3に対するMetHbの結合と膜脂質の過酸化の関係を検討するため、膜ゴーストからスペクトリン/アクチンを除いた反転膜小胞 (IOV) を、F3、過酸化したF3、およびF6から調製し、MetHbと反応させたところ、過酸化したF3、およびF6でF3よりも強い結合が認められた。

【考察】老化赤血球におけるBand 3のクラスター化は、老化による赤血球内の還元能の低下に起因し、過酸化によって生成されたMetHbが、過酸化を受けた膜に存在するBand 3と強く結合することにより誘導されると考えられた。