スズキ アツシ
Suzuki Atsushi
鈴木 敦 所属 医学部 医学科(東京女子医科大学病院) 職種 講師 |
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言語種別 | 日本語 |
発表タイトル | 真菌感染症ならびに腎機能障害を伴った移植待機患者に対し心臓移植後慎重に免疫抑制剤の調 節を行い、重大な合併症なく退院しえた一例 |
会議名 | 第36回日本TDM学会・学術大会 |
学会区分 | 全国規模の学会 |
発表形式 | 口頭 |
講演区分 | 一般 |
発表者・共同発表者 | ◎髙田卓磨, 服部英敏, 菊池規子, 駒ヶ嶺正英, 市原有起, 鈴木敦, 志賀剛, 西中知博, 齋藤聡, 新浪博, 萩原誠久, 布田伸一 |
発表年月日 | 2019/05/26 |
開催地 (都市, 国名) |
東京 |
概要 | 症例は35歳 男性。拡張型心筋症による重症心不全のため2014年9月左心補助人工心臓植え込 みを施行し、心臓移植待機していた。2017年10月に発熱で入院し、血液培養からMRSAが検 出され、抗MRSA薬(リネゾリド)で治療を開始した。その後もMRSA菌血症が持続するため 抗MRSA薬による治療を継続し、2018年4月に血液培養でMRSA陰性を確認したが、4月に再 度発熱を認め、血液培養から酵母様真菌が検出され、ミカファンギンで治療を開始した。 Candida parapsilosisが起炎菌と判明し、感受性を考慮しフルコナゾールへ変更したが、その 後の血液培養で同様の真菌が検出され、L-アムホテリシンBへ変更し、血液培養は陰性化し た。また、L-AMBの使用に伴い腎機能の悪化(eGFR 30-40 mL/min/1.73m2)、汎血球減少 を生じ、適宜輸血ならびにG-CSF製剤の使用を必要とした。2018年9月ドナーが発生し心臓移 植を施行した。抗HLA抗体陽性のため、術前に2回の血漿交換を施行した。腎機能障害を懸念 し、バシリキシマブを用いたインダクション療法をおこない、その後タクロリムス、ミコフェ ノール酸モフェチル、メチルプレドニゾロンを用いた免疫抑制療法を行った。術後、免疫抑制 薬使用のもと感染の再燃なく経過した。術前から使用していたアンホテリシン静脈内投与はフ ルコナゾール静脈内投与に変更、再燃ないことを確認し経口投与に変更した。フルコナゾール 投与や経口投与への変更時にはタクロリムスの血中濃度の上昇が予想され、フルコナゾール投 与時、経口投与時には減量して投与し、頻回に血中濃度の採血をおこなった。移植後定期の心 筋生検では拒絶の所見はなく、創傷治癒が得られた段階でエベロリムスを導入し、術後106日 目に独歩退院した。考察心臓移植は、生存率、quality of life(QOL)という観点から重症心不全 患者における確立された治療であるが、ドナー不足により長期の移植待機日数が必要とされ る。そのため、心臓移植へのつなぎ(bridge to transplantation)として補助人工心臓の植込みが 移植待機期間中に行われ、日本では心臓移植が行われた患者のうち約90%に補助人工心臓の 植込みが行われているが、補助人工心臓を装着したうえでの待機日数も長期化している。近 年、補助人工心臓の進歩により、長期成績は向上しているものの、感染などの合併症や頻回の 輸血による抗HLA抗体の出現により心臓移植後の治療に難渋する場合がある。本症例でも補助 人工心臓植込み後の感染により長期の抗菌薬投与を余儀なくされ、副作用による腎機能障害も 併発した状況下で心臓移植を行い、免疫抑制薬投与により易感染状態となる移植後も長期の抗 菌薬投与を必要とした。免疫抑制薬としてタクロリムスを使用したが、アゾール系抗真菌薬は タクロリムスの血中濃度に及ぼす影響が大きいことが知られている。そのためアゾール系抗真 菌薬の投与に際しては、血中濃度、腎機能の測定をおこないながら慎重にタクロリムスの投与 量の決定を行った。同時に、本症例では移植登録時、抗HLA抗体陰性であったが、感染や頻回の輸血によると考えられる抗HLA抗体の出現により、拒絶のリスクを常に検討しながら免疫抑 制薬の投与量を決定する必要があった。ドナー不足が深刻な我が国において、確実な長期成績 の向上のためには、個々の症例の背景を深く理解したうえで適正に免疫抑制薬の血中濃度測定 を使用していくことが重要であると考えられた。 |