タムラ マナブ   Tamura Manabu
  田村 学
   所属   研究施設 研究施設
   職種   准教授
言語種別 日本語
発表タイトル 運動野白質電気刺激で同側拇指球筋が収縮した左中心前回神経膠腫の1例
会議名 日本脳神経外科学会第72回学術総会
学会区分 国際学会及び海外の学会
発表形式 ポスター掲示
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎反田茜, 丸山隆志, 新田雅之, 田村学, 安田崇之, 今中康介, 生田聡子, 村垣善浩, 岡田芳和
発表年月日 2013/10/18
開催地
(都市, 国名)
横浜市
学会抄録 日本脳神経外科学会第72回学術総会 プログラム・抄録集
概要 3P-P107-04 ポスター:グリオーマ 術中モニタリング
【はじめに】皮質脊髄路の90%は、一次運動野から錐体交叉を通り対側を支配するが、10%は
延髄で分岐し、同側を支配する。同側線維は通常は機能していないと考えられているが、今回
我々は覚醒下での腫瘍摘出術において、左運動野深部白質の電気刺激にて、同側の拇指球筋の
筋収縮を認めた症例を経験したため報告する。
【症例】38歳男性、脳ドックにて左前頭葉の脳腫瘍を指摘された。来院時意識清明、自覚症状
として右前腕尺側の痺れ、その他運動障害は認めなかった。MRI上左中心前回に限局し壁在結
節を伴う25x20mm大の嚢胞性腫瘍を認め、noduleはGdで造影効果を認めた。PETにてGd陽性領域
と一致したコリン及びメチオニンの集積(T/N ratio1.85)を認めた。腫瘍が一次運動野に位
置していたため覚醒下で腫瘍摘出術を施行した。腫瘍の後外側縁を剥離時、皮質下マッピング
を2mAの電気刺激を行った所、左拇指球筋の収縮を患者が申告し、再度の電気刺激により両側
拇指球筋の収縮を客観的に確認した。画像上の全摘出を施行したが、術中MEP、SEPは共に低下
を認めず、術後麻痺は出現しなかった。病理診断はpilocytic astrocytoma Mib-1<1%で、後
療法なく退院となった。
【考察】今回、腫瘍摘出術を覚醒下で施行したため予想外の現象を確認することができた。一
般に脳梗塞後麻痺については同側皮質脊髄路が麻痺改善に際し働くとされている。しかし、今
回の症例では同側皮質脊髄路が反応しており、運動野圧迫によって刺激への反応閾値が低下し
たか、運動抑制が運動刺激に変化した可能性が考えられる。また、患側刺激で同側の筋収縮が
惹起された現象は、MEPで問題となる偽陽性の機序である可能性が示唆される。
【結論】渉猟しえた限り、報告例のない珍しいマッピング現象を報告した。同側皮質脊髄路の
解剖学的な神経線維の連絡に基づくものと考えられるが、腫瘍による長期におよぶ運動線維へ
の物理的影響により連絡線維の再構築をきたしたために生じた現象の可能性がある。