イチハラ ユウキ   Ichihara Yuuki
  市原 有起
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   講師
言語種別 日本語
発表タイトル 左室補助人工心臓補助下の大動脈弁逆流についての基礎的・臨床的検討
会議名 第49回日本心臓血管外科学会学術総会
主催者 日本心臓血管外科学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 ポスター掲示
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎飯塚慶, 西中知博, 市原有起, 駒ヶ嶺正英, 久米悠太, 新浪博, 西村隆, 巽英介
発表年月日 2019/02/13
開催地
(都市, 国名)
岡山県岡山市
概要 *ポスター23 心不全-1
左室補助人工心臓(LVAD)補助中の大動脈弁逆流(AI)は重大な合併症の一つであり、時に循環補助継続を困難とする。臨床研究から関連因子が報告されているが、基礎的見地からの検討は未だ十分には施行されていない。我々は種々の臨床的疑問について、動物実験による検討を行い、その知見を臨床にフィードバックした。 LVAD下にAIが起こると、LVADから駆出された血液がAIにより左心室に戻るrecirculationが起こり、全身循環血液量が不足する。これに対し、LVAD回転数を上げてoutputを増やそうとする試みは議論となっていた。大動物におけるLVAD-AIモデルを確立し、成ヤギ5頭にて回転数が血行動態に与える影響を検討した。Sellers3度以上のAIのあるLVAD補助下で回転数を増加させると、見かけのポンプ流量は増加したが、これはrecirculationの増加によるものであり、outputは改善しないことが明らかとなった。 AI進行は時にLVAD循環維持のための外科的介入を要するが、その指摘時期は明らかでない。LVAD-AIモデルの成ヤギ5頭にて心不全モデルを作成し、AI進行による血行動態変化を評価した。AIが進行すると本来LVADによって低下していた左房圧や左室圧が上昇し、recirculationによる容量負荷が圧負荷となって現れることが示唆された。またrecirculation率が40%を超える辺りから左心系の圧上昇が急激になったことから、これをLVAD補助の限界と捉え、外科的介入を検討することが望ましいと考えられた。 LVAD中のAI進行には、LVADにまつわる解剖学的要因も重要となることが示唆されている。送血グラフトが大動脈となす角度(O-A angle)については、O-A angleの大きい患者群でAIが進行しやすいことが報告されている。LVAD-AIモデルのウシ7頭を用いて、O-A angleが血行動態に与える影響を検討した。大きなO-A angle下では送血グラフトからの血流が直接大動脈弁方向に向かい、圧変化がなくともrecirculation率が増加することが示唆された。 これらrecirculation抑制のためには、LVAD駆動条件を適切に保つ必要がある。LVAD-AI心不全モデルの成ヤギにて、心拍に同期して収縮期と拡張期で回転数を変える手法についても検討した。拡張期に回転数を上げるモードでrecirculation率が有意に減少した。 LVAD補助中のAIについて動物モデルを作成し、基礎的な見地を交えて評価した。臨床成績改善のため、臨床研究・基礎研究双方からフィードバックが重要と考える。