イケハラ マサアキ   Ikehara Masaaki
  池原 大烈
   所属   医学部 医学科(附属足立医療センター)
   職種   助手
言語種別 日本語
発表タイトル 静脈グラフトのリバイバルは「歴史は繰り返す」か?
会議名 第49回日本心臓血管外科学会学術総会
主催者 日本心臓血管外科学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(指名)
発表者・共同発表者◎新浪博, 森田耕三, 池田昌弘, 駒ヶ嶺正英, 池原大烈, 齋藤博之
発表年月日 2019/02/11
開催地
(都市, 国名)
岡山県岡山市
概要 *シンポジウム05
冠動脈バイパス術の静脈グラフトリバイバル

CABGの歴史は半世紀を過ぎたところで、当初SVGによるACバイパスが標準であったが、LITAの長期開存性が証明されて以来、動脈グラフトを多用したCABGが普及している。LITAに次ぐ第二の動脈グラフトとしては本邦ではRITAが最も頻用されており、特に両側内胸動脈を左冠動脈系に使用する事で生命予後を改善するとの報告もみうけられる。しかしながら第三の動脈グラフトである橈骨動脈や右胃大網動脈がSVGより優れていることは証明されていない。SVGは長期開存性が満足すべきものではないが、未だに多く用いられているグラフトであることも事実である。日本冠動脈外科学会の全国統計でみるとSVGの使用率は2005年で29.8%であったが年々増加傾向を示し、2016年は42.1%に使用されており、近年、SVGが使用される割合が増加している。積極的にSVGを使用する根拠としては、no touch techniqueによる採取法の導入、内胸動脈の側枝で用いることによるNOの恩恵、external stentによる血管に対するストレス軽減などの工夫により長期開存性の向上が期待できることが挙げられる。その一方で高齢者や透析患者などハイリスク患者が多くなり生命予後があまり長くないために動脈グラフトよりも採取が簡便なSVGを用いるという消極的な理由も挙げられる。当院におけるグラフト選択はall arterial graftingを行うことを基本としているが、右冠動脈の狭窄が90%未満、あるいは高齢者にはSVGを使用している。当院で2017年10月から2018年9月の1年間で行なった連続単独CABG症例は140例であり、all arterial graftingは66%、SVG使用は34%であった。All arterial群とSVG使用群のバイパス枝数、糖尿病、透析比率に差はなかったが手術時年齢はSVG使用群で有意に高齢であった。
当院におけるSVGの使用はどちらかというと消極的使用ということになるが今後SVGの採取法などの工夫が長期開存性を向上させることが証明されればSVGの使用は多くなると考えられる。このことは半世紀前のCABGに逆行することになるがこれが進歩であるか否かは当面は更なる長期間のクリニカルエビデンス次第と考える。