イナイ ケイ
Inai Kei
稲井 慶 所属 医学部 医学科(東京女子医科大学病院) 職種 准教授 |
|
言語種別 | 日本語 |
発表タイトル | 成人先天性心疾患をどうみるか |
会議名 | 第66回日本心臓病学会学術集会 |
主催者 | 日本心臓病学会 |
学会区分 | 全国規模の学会 |
発表形式 | 口頭 |
発表者・共同発表者 | ◎稲井慶 |
発表年月日 | 2018/09/07 |
開催地 (都市, 国名) |
大阪府大阪市 |
概要 | *教育講演3 / 成人先天性心疾患をどうみるか
先天性心疾患をもって出生するこどもたちの大部分が成人となる時代が到来した。半世紀を超える先人たちのたゆまぬ努力の成果は、いまや毎年1万人にのぼる成人先天性心疾患(ACHD)患者を社会に送り出すに至っている。外科的術式や内科治療の発展によって、これまで治療に難渋していた心不全や不整脈の解決への糸口が次々と明らかにされつつある。とはいえ解決できない問題が今後も残されていくことは確かであろう。その最たる例がFontan手術後の遠隔期合併症問題である。成人Fontan術後患者は、今後も増加の一途をたどることが予測されるが、現在、姑息手術としてのFontan手術の長期的問題点があまたあぶり出されている。このような状況を迎え、ACHD総合診療体制構築には、小児科医師、小児心臓医師に循環器内科医師がチームを組み、産科、麻酔科、その他多くの診療科や看護師、ソーシャルワーカーといった多職種との連携を基盤とする方向性が叫ばれるようになっている。本講演では日常の成人先天性心疾患診療の現場で私個人が重要視しているポイントを中心にお話したいと考えている。主要なポイントは三つある。ひとつは、小児期の患者の状態のみに目を向けていては、20年後30年後に大きな負の遺産をもたらすことになりかねないということ。つまり患者の生涯を見据えた治療戦略を構築する必要があるということである(lifelong perspective)。二つめは、あくまで目指すものは患者のよきQOLであって雑多な検査データではないということと、その目標にいたるまでにいかに侵襲を少なくできるかということ(QOL oriented, less invasive)。三つめはそれでも不幸な転帰を辿らざるをえない場合の終末期医療への取り組みの重要性である。これらの問題提起が今後ACHD診療の現場で悪戦苦闘している、あるいは今後することになる多くの医療関係者の方々のお役に少しでも立つことがあれば幸いである。 |