カワマタ タカカズ   Kawamata Takakazu
  川俣 貴一
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   教授・基幹分野長
言語種別 日本語
発表タイトル 小児悪性脳腫瘍に対する光線力学療法(Photodynamic Therapy:PDT)の適応と将来展望
会議名 日本脳神経外科学会第77回学術総会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(公募)
発表者・共同発表者◎藍原康雄, 千葉謙太郎, 都築俊介, 齋藤太一, 新田雅之, 丸山隆志, 村垣善浩, 川俣貴一
発表年月日 2018/10/11
開催地
(都市, 国名)
仙台市
学会抄録 日本脳神経外科学会第77回学術総会 プログラム・抄録集 16
概要 シンポジウム 23
小児脳腫瘍治療の現状と課題
(背景)光線力学療法(Photodynamic Therapy, PDT)は、腫瘍親和性のある光感受性物質(Photosensitizer, PS)を投与した後、レーザ光を照射することにより光化学反応を引き起こし、腫瘍細胞を変性壊死させる癌の選択的治療法である。成人の悪性原発性脳腫瘍分野ではすでに臨床に応用されているが、小児悪性脳腫瘍に対する Talaporfin sodium を用いた PDT はこれまでに報告がない。(目的)当施設では成人の脳腫瘍に対する PDT の多くの治療実績があり、有効性および安全性に関する知見も十分に有することから院内倫理委員会(平成 29 年 9 月)審査承認得て、小児(6 歳以上 20 歳未満)悪性脳腫瘍(初発、再発)に対する PDT を開始した。(症例)小児悪性原発性脳腫瘍は様々な WHO 分類の組織型から構成され、Grade 3/4 に分類される悪性神経膠腫(High GradeGliomas, HGGs)は、成人と同様に標準治療後も高頻度に局所再発を認め(50-85%), 6 か月の無増悪生存率(PFS)41%, 12 ヶ月の全生存率(OS)61%, 24 ヶ月 OS 37% と予後不良である。上衣腫は成人と比較して小児に頻度が多い組織型であり、特に退形成性上衣腫 は嚥下・呼吸機能を司る脳神経へ強固に浸潤し機能を温存した全摘出困難症例が多い。また高頻度に再発・播種を認めるが、有効な化学・放射線治療は確立されていない。そのため、多段階の外科的摘出が余技なくされる退形成上衣腫は PDT の治療効果が最も期待されている。また、大脳基底核(特に視床)部神経膠腫、脳幹部悪性神経膠腫へと順次治療対象を広げている。(結語)小児悪性脳腫瘍症例に対する PDT の適応は、患児 QOL を最大限に維持しながら良好な局所コントロールが得られることで、既存の治療法では得られなかった機能的予後および生命予後の改善に繋がるものと期待される。一方で、PDT レーザの深達度が2.0mm とされているため腫瘍の体積が大きいとレーザが十分に到達せず、効果が不十分となる。そのため、安全かつ最大限の外科的摘出術が前提となり、治療対象症例の選択が重要となる。