ムラガキ ヨシヒロ   Muragaki Yoshihiro
  村垣 善浩
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   客員教授
言語種別 日本語
発表タイトル WHO grade II びまん性神経膠腫の悪性転化リスクを最小化する治療とそのタイミング
会議名 日本脳神経外科学会第77回学術総会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 シンポジウム・ワークショップ パネル(公募)
発表者・共同発表者◎青木恒介, 山本高士, 鈴木啓道, 大岡史治, RANJITMelissa, 本村和也, 中村英夫, 成田善孝, 高橋雅道, 溝口昌弘, 吉本幸司, 籾井泰朋, 村垣善浩, 波江野洋, 若林俊彦, 夏目敦至
発表年月日 2018/10/11
開催地
(都市, 国名)
仙台市
学会抄録 日本脳神経外科学会第77回学術総会 プログラム・抄録集 15
概要 シンポジウム 22
Lower grade glioma:分子から治療まで
WHO grade II の diffuse gliomas(low-grade gliomas, 以降 LGGs)に対する化学療法や放射線治療は、患者予後に寄与する一方で、遺伝子変異の誘因となることが知られている。遺伝子変異の蓄積が腫瘍の進展や悪性化に寄与することはよく知られているところであり、LGGs においてどの治療をどの時期に行うかは多くの臨床医にとって悩ましい問題である。今回我々は、LGGs 各 subtype において、悪性転化を最も起こしにくい治療およびその時期を明らかにすることを目的として、体積変化に関する数理モデルを作成し、治療介入と遺伝子変異、腫瘍進展や悪性転化との関係について検討した。対象は、6 施設にて 1990-2014 年に LGGs と診断された 201例。140 例は過去に全エクソンもしくは標的シークエンス等を行っており、61 例では Sanger sequencing と MLPA 法を用いることで、全例で IDH1 変異と染色体 1p19q 共欠失の遺伝子診断を行った。平均観察期間は 78 ヶ月で、76 例(38 %)にて悪性転化を認めた。頭部 MRI の T2 強調画像/FLAIR 像を用いて経時的な体積評価を行い、悪性転化の判断は病理標本と MRI のガドリニウム造影効果の有無にて行った。腫瘍体積は指数関数的に増大すると仮定し、指数近似を用いて無治療時及び治療介入後の増大率を計算した。Oligodendroglioma, IDH-mutant and 1p/19q-codeleted は、他の subtype に比べ悪性転化するまでの期間が有意に長かった(p <0.01)。Oligodendroglioma, IDH-mutant and 1p/19q-codeleted と Diffuse astrocytoma, IDH-mutant では、いずれも腫瘍摘出術後には増殖速度が増加し、化学療法や放射線治療により増殖速度が低下したが、維持療法後は開始前と同程度まで増殖速度は回復した。一方、悪性転化率は化学療法や放射線治療を行うと上昇する傾向にあった。数理モデルを用いることで、術前に予想される手術摘出度別に、悪性転化率を最小化する手術や術後療法の理想的な時期を明らかとすることができた。これらの結果は、今後の有益な LGGs 治療指針になりうると考えられた。