コヤナギ チヒロ
Koyanagi Chihiro
小栁 千紘 所属 医学部 医学科(東京女子医科大学病院) 職種 助教 |
|
言語種別 | 日本語 |
発表タイトル | 心エコー図で偶発的に発見された先天性心室憩室の一例 |
会議名 | 日本超音波医学会第90回学術集会 |
主催者 | 日本超音波医学会 |
学会区分 | 全国規模の学会 |
発表形式 | 口頭 |
講演区分 | 一般 |
発表者・共同発表者 | ◎谷野紗恵, 新井光太郎, 齋藤千紘, 柳下慈子, 芦原京美, 萩原誠久 |
発表年月日 | 2017/05/27 |
開催地 (都市, 国名) |
宇都宮市 |
概要 | 症例は 64 歳女性.原発性アルドステロン症・両側副腎腫瘍の術前検査として施行した経胸壁心エコー図で,左室基部後下壁に 5.3 × 1.9cmの心室瘤様の突出を認めた(図).心筋伷塞後の心室瘤除外のため運動負荷心筋シンチグラフィを行ったところ,負荷誘発性心筋虚血は陰性であり,伷塞も認めなかった.また心臓 MRI では,同部位の壁菲薄化や明らかなガドリニウム遅延造影像は認めず,心筋伷塞や二次性心筋症は否定的と判断し左室憩室と考えた.経食道心エコー図でも同様に僧帽弁直下の心基部の心室中隔側に4.2×1.5cmの内腔の突出を認め,入口部は 3.3cm とやや広く,心室に沿って心尖部方向にやや細長く垂れ下がっていた.突出した左室壁は周囲の心筋から連続しており,収縮も認めるものの心筋組織はやや粗い印象を受け,憩室の先端の一部は心筋組織がやや菲薄化していた.先天性心室憩室は,組織学的に筋性憩室と線維性憩室とに分類される.筋性憩室は正常心筋構造である3 層構造を有し,正常な収縮性が認められる.好発部位は主に心尖部,前・下側壁である.線維性憩室は,主に僧帽弁,大動脈弁輪直下の心基部や心尖部に発生し,病理学的に 3 層構造を有するものの,種々の程度の線維化組織に置換されており,正常の収縮性は認められない.一方心室瘤は,冠動脈疾患,心筋症,心筋炎,心サルコイドーシスなどの基礎疾患により後天的に引き起こされ,組織学的に心筋の断裂あるいは欠損を認める.心室憩室と心室瘤の鑑別には,収縮性や,左室との交通孔の大きさが有用とされている.心収縮と同期して収縮期に壁厚が増加する場合は憩室,収縮期に突出する場合は心室瘤と判断できる.憩室の交通孔は狭いのに対し,瘤では広いとされている.心臓MRI において,線維組織化された障害心筋部位に遅延造影像を認めるため,一般的に心室瘤では遅延造影像を認めるが,心室憩室では遅延造影像を認めないとの報告が多い.本症例では,経食道心エコー図で連続した心筋構造および収縮期の壁厚増加を認め,心臓 MRI では同部位に遅延造影像は認めなかった.運動負荷心筋シンチグラフィにて左室壁虚血陰性であり,冠動脈病変の関与も否定的であった.そのため,先天性心室憩室の筋性憩室と診断した.心エコー図にて偶発的に発見された稀な症例であり,文献的考察を加え報告する. |