ハギワラ ノブヒサ   HAGIWARA Nobuhisa
  萩原 誠久
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   客員教授
言語種別 日本語
発表タイトル 日本人の冠動脈疾患における積極的脂質低下療法の意義~HIJ-PROPER試験の結果から~
会議名 第81回日本循環器学会学術集会
主催者 日本循環器学会/MSD株式会社/バイエル薬品株式会社
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
発表者・共同発表者◎萩原誠久
発表年月日 2017/03/18
開催地
(都市, 国名)
金沢市
学会抄録 第81回日本循環器学会学術集会 プログラム集 359
概要 *Fireside Seminar25
 脂質異常症治療の最大の目的は脳・心血管イベントの抑制であり、そのほとんどはスタチン投与と厳格なLDL‒C管理によって既定されている。しかし、IMPROVE‒IT試験では、急性冠症候群(ACS)患者を対象としてスタチンに非スタチンである小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、エゼチミブを上乗せし、LDL‒Cを55 mg/dLまで低下させることにより、脳・心血管イベントを6.4%有意に減少させる事が証明された。この結果は、初めて非スタチンによるLDL‒C低下が脳・心血管イベント抑制に寄与する事が証明された試験である。本試験によりLDL‒Cコントロールは「Even Lower,Even Better」であることが証明されたが、脂質異常症治療においてLDL‒C値のみならず、コレステロール吸収亢進が脳・心血管イベント発症の重要なリスク因子になる事が過去の報告により示唆されている。
 スタチンによる全死亡の低下が確認された初めての試験である4S試験のサブ解析では、コレステロール吸収を4分位に分け解析した結果、コレステロール吸収低値群ではプラセボに比較しスタチンによるイベント抑制効果が十分に発揮されているが、コレステロール吸収高値群ではスタチンによるイベント抑制効果が減弱する事が確認された。また、DEBATE試験ではLDL‒C値が同じ2群において、コレステロール吸収高値群は低値群と比較して、脳・心血管イベントの発症率が高い事が確認されている。
 これらのデータに基づいて、我々は「コレステロール吸収」を標的にした臨床研究を計画した。また、欧米における脂質異常症治療のエビデンスは確立されているが、日本においては決して十分とは言い難い状況であることから、日本人の脂質異常症治療に関するエビデンスの確立を目的として、HIJ‒PROPER(PRoper level of lipid lOwering with Pitavastatin and Ezetimibe in acute coRonary syndrome)試験を実施した。
 本試験は日本人におけるハイリスク二次予防において「LDL‒C 70 mg/dL未満の管理目標が妥当か否か」を明らかにするために、ACS患者を対象とし、標準的治療(スタチン単独療法:LDL90‒100mg/dl)と、積極的治療(スタチンとエゼチミブの併用:70mg/dl未満)の2群にランダム化を行い、両群における長期予後について比較検討した試験である。本セミナーではHIJ‒PROPER試験の結果報告と共に、日本人における脂質異常症の治療戦略およびコレステロール吸収阻害の有用性について解説したい。