アラシキ ノブト
Arashiki Nobuto
新敷 信人 所属 医学部 医学科 職種 助教 |
|
言語種別 | 日本語 |
発表タイトル | 赤血球膜-リポタンパク質間におけるコレステロール移動の解析 |
会議名 | 日本膜学会第36年会 |
主催者 | 日本膜学会 |
学会区分 | 全国規模の学会 |
発表形式 | 口頭 |
講演区分 | 一般 |
発表者・共同発表者 | ◎新敷信人, 高桑雄一 |
発表年月日 | 2014/05/12 |
開催地 (都市, 国名) |
東京都 |
学会抄録 | 日本膜学会第36年会講演要旨集 52 |
概要 | 【目的】遺伝性球状赤血球症(Hereditary Spherocytosis; HS)は、主に赤血球の膜タンパク質の異常が原因で生じる疾患であるが、今回HSの特徴を呈しながらも膜タンパク質には異常のない赤血球を解析する機会を得た。この患者赤血球では、比重の著明な増加と膜コレステロール量の半減が認められ、未知の病態として、赤血球膜とリポタンパク質間のコレステロール移動がリポタンパク質側に偏っている状態が推察された。本研究では、まずそもそも不明な点が多いこの移動メカニズムを解明することを目的とした。
【方法と結果】 健常成人より洗浄赤血球および血漿から超遠心分画法で単離したリポタンパク質(LDLとHDL)を得た。赤血球とLDL、HDL間のコレステロールの双方向移動を解析するため、前者または後者(LDL、 HDLのいずれか)に3H-遊離型コレステロールを添加して標識し、両者を総コレステロール量1:1(生理的状態)で混和した。経時的に48時間まで放射活性を測定したところ、双方向の移動が観察され、約12時間で全標識コレステロールの約50%が移動して停止した(同位体平衡点: IE)。この際、HDLでは放射活性を持ったエステル型コレステロールが生成していたが、Lecithin-Cholesterol Acyltransferase(LCAT)活性を中和抗体またはN-Ethylmaleimideで完全に阻害すると、IEは半減した。また、LCAT活性を抑制すると報告のある急性相タンパク質ハプトグロビンも同様にIEを減少させた。最後に、赤血球とリポタンパク質の混和量比を変えたところ、受け取り側の量の増減に応じてIEは増減した。 【考察】 赤血球とリポタンパク質間で遊離型コレステロールの移動が双方向に生じ、移動する量は受け取り側の許容量に依存していた。生理的状態を外れ、双方のコレステロール量に偏りがある場合には、単純な交換ではなく量の変化が生じることが示唆された。HDLではLCATによるコレステロールのエステル化が移動量を決定しており、本患者においては、血漿中にハプトグロビンが存在せず、LCATの活性を抑制できないことが、赤血球膜からコレステロールを減少させている要因である可能性が考えられた。 |