アラシキ ノブト   Arashiki Nobuto
  新敷 信人
   所属   医学部 医学科
   職種   助教
言語種別 日本語
発表タイトル 脂質過酸化とメトヘモグロビンによる赤血球膜タンパク質バンド3-アンキリン間の結合への影響
会議名 日本膜学会第33年会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎新敷信人, 萬野純恵, 高桑雄一
発表年月日 2011/05/12
開催地
(都市, 国名)
東京都
学会抄録 日本膜学会第33年会講演要旨集 36
概要 【背景と目的】赤血球は120日で寿命を迎え、脾臓のマクロファージで除去される。この際、赤血球膜タンパク質バンド3 (Band 3) のクラスター化が重要であるが、その過程は未だ不明である。昨年、老化赤血球膜および、人為的に脂質過酸化した膜においてのみMetHbはBand 3に強く結合し、かつBand 3のクラスター化がMetHbにより誘導されることを報告した。本研究では、脂質過酸化により生じるMetHb‐Band 3間の結合様式の変化から、Band 3の構造変化が脂質過酸化によって起こり、MetHbやBand 3と膜骨格をつなぐアンキリンとの結合に影響を与えることで、クラスター形成を促進させると考え、これを検証した。

【方法と結果】ヒト赤血球から調製した反転膜小胞 (IOV) へのMetHbの結合は、飽和曲線を示したが、IOVを脂質過酸化剤 (tert-butyl hydroperoxide) で処理すると、結合親和性が2.5倍程度高く、正の協調性 (Hill係数3.2) を示した。この結果は、密度勾配遠心法により分画した老化赤血球においても再現した。脂質過酸化およびMetHbの結合によるBand 3とアンキリンの解離を解析するため、脂質過酸化したIOVにMetHbを加えた後、抗アンキリン抗体を用いてIOVに残るアンキリン量を解析した。脂質過酸化により、IOV結合アンキリンは20%程度減少し、MetHbの結合量に応じて残存アンキリンはさらに減少した。次に、Band 3とアンキリンの結合を解析するため、IOVから予めアンキリンを外したKI-IOVを過酸化処理した後、精製したアンキリンを反応させたところ、強い結合 (KD = 10-9 M) が消失し、結合親和性が低下した。

【考察】脂質過酸化によりBand 3に構造変化が生じ、MetHbが効率よく強く結合することで、Band 3‐アンキリン間の結合親和性が低下し、Band 3が膜骨格から解離して自由に運動できるBand 3が増加するとともに、このBand 3が自身で多量体を形成するMetHbによって架橋されることにより、クラスターを形成するのではないかと考えられた。このMetHbの正の協調性を持った結合様式は、赤血球の生死を決めるスイッチとしてとても都合のよい性質であると言え、MetHbが最終的に赤血球の寿命を決める因子であると考えられた。