タキタ モリチカ   Morichika Takita
  瀧田 守親
   所属   医学部 医学科
   職種   助教
言語種別 日本語
種別 全体執筆
表題 骨転移ニッチによるがんの骨転移と骨病変
書名 東京女子医科大学雑誌
ISBNコード 2432-6178
版・巻・頁 87,4,81-88頁
総ページ数 8
出版社東京女子医科大学学会
出版地
(都市, 国名)
東京、日本
著者・共著者 瀧田守親
発行年月 2017/08
概要 がんは我が国における死亡原因の第一位である。がんが根治困難である理由として、遠隔臓器への転移や再発の問題があり、これらは未だ克服できていないのが現状である。がん細胞の原発巣から遠隔臓器への転移には転移指向性があり、乳がんや前立腺がんは高率に骨組織に転移することが知られている。しかしながら、これらがん細胞の骨への転移指向性の機構は長らく不明であった。近年、がんの転移と再発の双方を支持する微小環境(転移ニッチ)の概念が提唱されている。これら転移ニッチはがん細胞が遠隔の転移標的臓器に到着前に形成される場合と到着後に形成される場合がある。本稿では骨転移ニッチに焦点を絞り、骨転移ニッチ調節因子によって制御されるがんの骨への転移指向性とその機構を紹介する。転移前の段階では、原発巣の腫瘍細胞が受容体チロシンキナーゼMETやリシルオキシダーゼなどの転移前ニッチ調節因子を分泌し、転移予定先の骨においてがんの転移と増殖を支持する転移前ニッチを形成する。一方、がん幹細胞のような少数の細胞集団が転移先の骨に到着後にVCAM-1、TGF-β、PGE2、IL-6、ペリオスチンなどの転移後ニッチ調節因子が産生され、これら因子は骨におけるがん細胞の休眠状態での維持や再発、骨破壊病変の形成に関与する。以上をまとめると、がんの骨転移指向性はがん細胞と宿主の転移ニッチ構成細胞との細胞間相互作用により産生された骨転移ニッチ調節因子によって決定されると考えられる。今後は骨転移ニッチ調節因子を標的とする新規分子標的薬の開発が急務であり、これら新規分子標的薬による効果的な骨転移の阻止が望まれる。