ホシノ ジユンイチ
Hoshino Jiyun'ichi
星野 純一 所属 医学部 医学科(東京女子医科大学病院) 職種 教授・基幹分野長 |
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言語種別 | 日本語 |
種別 | 全体執筆 |
表題 | GAの目標値(HbA1cも含めて) |
書名 | 日本透析医学会雑誌 |
ISBNコード | 0914-7136 |
版・巻・頁 | 57,400頁 |
出版社 | (一社)日本透析医学会 |
出版地 (都市, 国名) | 東京, 日本 |
著者・共著者 | 星野 純一 |
発行年月 | 2024/05 |
概要 | 血糖コントロールは眼・腎臓・神経などの細小血管合併症および脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化症の進行抑制のために重要である.定期的に測定可能な主な血糖コントロール指標として,随時血糖,ヘモグロビンA1c(HbA1c),およびグリコアルブミン(GA)がある.一方で,フレイル等による糖新生能力低下や透析後の高血糖により血糖変動が大きいことから,その測定値の解釈は通常の糖尿病患者とは大きく異なっており,2022年のKDIGOガイドラインでは透析患者の管理目標値は明記されていない.しかし,透析診療において幅広く用いられていることから,治療ガイドとして参考目標値を明示する必要がある.
現在,国内の透析施設で最も頻用されている血糖コントロール指標はGAである.GAは2-3週間の血糖値を反映した指標であり,赤血球寿命の影響を受けない特色がある一方,るい痩などのアルブミン代謝低下状態では高値をとることが知られている. 日本透析医学会統計調査会による4万人を超える疫学調査の結果では,GA値20%以上,心血管イベントを有する場合や低使用状態の血液透析患者では24%以上で直線的に生命予後が不良になることが示された.腹膜透析患者のGA値は血液透析患者に比べてやや低値を取る傾向があるため,腹膜透析患者においては参考値となる. また,HbA1cと生命予後はU字型曲線の関係性を示し,HbA1cが極端に低値・高値を示す場合の生命予後は不良である.2012年のKDOQIガイドラインでは,複数の観察研究の結果に基づき,HbA1c 6.5-8.0%での管理を推奨した(注:その後の2022年KDIGOガイドラインでは記載されていない).日本人の場合,最も生命予後が良いHbA1cの範囲は6-8%であった.しかし,透析患者では赤血球寿命や貧血など様々な要因がHbA1cに影響するため,平均血糖値との相関関係はHbA1cよりもGAの方が優れている. 一方,これらのGA,HbA1cに関する報告は殆どが観察研究である.血糖コントロール指標が良好であっても低血糖・高血糖発作を呈するリスクがあることを常に念頭におく必要がある.疑わしい場合は血糖自己測定や持続グルコース測定を検討することが望ましい. |