ヌノダ シンイチ   SHINICHI NUNODA
  布田 伸一
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   特任教授
論文種別 総説
言語種別 日本語
査読の有無 査読なし
招待の有無 招待あり
表題 【心不全 研究と臨床の最前線】心不全の治療【非薬物治療】日本における心移植の新しい幕開け
掲載誌名 正式名:医学のあゆみ
略  称:医のあゆみ
ISSNコード:0039-2359
掲載区分国内
出版社 医歯薬出版(株)
巻・号・頁 232(5),537-543頁
著者・共著者 布田伸一†
担当区分 筆頭著者
発行年月 2010/01
概要 改正臓器移植法が2010年7月より施行されることで、年に10例程度しか行われなかった心移植例数の増加が期待され、これまで閉ざされていた幼小児への道も開かれた。ただしすぐには待機患者数にみあうドナーの確保は難しいと予想され、補助人工心臓を装着しながら待機する患者は今後も増え続けるであろう。わが国でも補助人工心臓を装着しながら自宅待機できるシステムの構築が必要である。心移植後の管理は、(1)免疫抑制療法、(2)拒絶反応の診断と管理、(3)感染症の管理、(4)免疫抑制薬を主とした各種薬剤の副作用の管理、(5)移植心冠動脈病変(いわゆる慢性拒絶反応)への対応に分けてそれぞれ考えていくとよい。カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンまたはタクロリムス)、ミコフェノール酸モフェチル(またはアザチオプリン)、ステロイドを併用した標準的三薬併用療法により、移植後早期に出現してくる急性拒絶反応(細胞性拒絶反応)はかなりコントロール可能となり、頻度は少ないものの、通常の病理組織学的検査では発見しにくく予後が悪い抗体関連型拒絶反応(血管性/液性拒絶反応)が再度注目されてきている。さらに最近の心移植後管理の注目点は、慢性期の予後をいかによくするかにシフトしている。そのひとつに移植心冠動脈病変(cardiac allograft vasculopathy:CAV)の管理がある。CAVは移植後数ヵ月から数年の経過で進展する、中小動脈を中心としたびまん性冠動脈狭窄で、冠動脈バイパス術や冠血管形成術は一般的に無効であるために、近年使用可能となったproliferation signal inhibitorであるmTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬のエベロリムスが期待されている。エベロリムスはFK506結合蛋白12と複合体を形成しmTORに結合し、キナーゼ活性を抑制することにより造血細胞(T細胞、B細胞)、血管平滑筋細胞、酵母などにおいて細胞周期のG1期で停止してS期に進まなくさせる。エベロリムスを使った大規模臨床研究では、CAVの進行がアザチオプリンに比べて減じるばかりでなく、サイトメガロウイルス(CMV)感染症も減少した。またエベロリムスの併用でカルシニューリン阻害薬の投与量が減少でき、腎機能障害が軽減できる。臓器移植は、まずドナーの存在からはじまる。法整備が欧米並みになった現在は、今後欧米並みに定着させていくためのスタートラインにようやく立ったところであると思わなければならない。(著者抄録)
文献番号 2010118391