ヌノダ シンイチ
Nunoda Shin'ichi
布田 伸一 所属 医学部 医学科(東京女子医科大学病院) 職種 特任教授 |
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論文種別 | 総説 |
言語種別 | 日本語 |
査読の有無 | 査読なし |
招待の有無 | 招待あり |
表題 | ここまで来た!心臓血管外科治療の最前線 心臓移植の贈り物 |
掲載誌名 | 正式名:東京女子医科大学雑誌 略 称:東女医大誌 ISSNコード:00409022/24326178 |
掲載区分 | 国内 |
出版社 | 東京女子医科大学学会 |
巻・号・頁 | 89(2),50-56頁 |
著者・共著者 | 布田伸一† |
担当区分 | 筆頭著者 |
発行年月 | 2019/04 |
概要 | 今から約50年前に行われたヒトの心臟移植は、その後の多くの偉業により、今や年間6,000例以上の実施例数という安定期を迎えている。一方、わが国では、改正臓器移植法施行後、年間50〜60例まで増加したが、その10〜12倍の600〜700人が心臓移植を待機している。上位Status1でも移植まで約1,000日以上の待機状態である。心臓移植の適応については、NYHA心機能分類やAHA/ACCのStage分類、補助人工心臓からみたINTERMACS Profile分類(わが国のJ-MACS分類)、等の評価がなされ、移植後の免疫抑制療法を含む管理ができない禁忌事項がないかが確認され最終判断される。心臓移植後の管理は、1)開心術後管理、2)除神経による影響、3)移植心虚血時間を代表とするドナー心由来の因子、4)心臓移植候補の重症心不全状態での他臓器障害の因子である心臓移植を受けるうえでの宿命的な因子と、5)拒絶反応の種類と程度、6)感染症や腫瘍に代表される免疫抑制状態、7)腎機能障害に代表される免疫抑制薬の有害事象、8)心筋生検に代表される度重なる心臓カテーテル検査というコントロール可能な因子に分けられる。移植後は、カルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)、代謝拮抗薬のミコフェノール酸モフェチル、ステロイドの三薬併用療法が行われるが、近年、抗体関連拒絶反応が再び注目されてきており、移植心冠動脈病変の発症進展と関係がある。感染症は、移植術後30日以降は免疫抑制療法に伴う感染症が多くなり、CMV、EBウイルス、肝炎ウイルスなどが問題となる。移植後慢性期の予後を規定するのは移植心冠動脈病変、悪性腫瘍、腎機能障害である。移植心冠動脈病変は、移植後数ヵ月から数年の経過で進展する中小動脈を中心としたびまん性冠動脈狭窄で、移植心の虚血をきたすが、冠動脈狭窄はびまん性のため、血管内超音波法(IVUS)で肥厚した血管内膜の観察で診断される。本病変は免疫学的機序と非免疫学的機序で形成されるが、mTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬の効果が確立されている。心臓移植後慢性期には、アドヒアランス維持も重要であり、多くの多職種とともに長い「移植人生」を歩むことになる。心臓移植は、「命」の贈り物ばかりでなく、多くの多職種が関与するEBMとNBM(narrative based medicine)が補完的に関与する理想の医療体制を社会にもたらす。(著者抄録) |
文献番号 | 2019219425 |