コダカ ケイコ
  小髙 桂子
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   講師
言語種別 日本語
発表タイトル 院内連携により​迅速な治療が可能であった​パンコースト腫瘍患者の一例
会議名 第8回日本がんサポーティブケア学会学術集会
主催者 日本がんサポーティブケア学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎小髙桂子, 伊東俊雅, 小野澤聡子, 冨永春子, 周治由香里, 慶 元箕​, 湯川寛子, 榎本幸輔, 水谷健太
発表年月日 2023/06/22
国名 日本
開催地
(都市, 国名)
奈良コンベンションセンター
開催期間 2023/06/22~2023/06/24
国際共著 国際共著
概要 【はじめに】

パンコースト腫瘍は、その発生部位から早期発見が困難なことが多く、進行がんで診断され以降の治療には難渋する。今回、院内多科連携により迅速に治療開始が可能となった患者を経験したので報告する。

【症例】

70代男性 独居、 職業 清掃業

生来健康で、定期検診などは全く受けていなかった。

X年Y-1月初旬頃より右上肢の痺れと疼痛を自覚していた。同年Y月1日、右上肢~右肩の疼痛・浮腫が増悪し、近医循環器内科を受診し、精査にて右鎖骨下動脈や脊椎浸潤を伴う右進行肺がんが認められた。このため、同月11日に当院呼吸器外科に初診となり、同日に緩和ケア外来紹介となった。診察では、右上肢の疼痛・浮腫、運動神経障害が認められた。疼痛は右前腕から上腕にかけて高度で肘関節の自動運動に制限があり、さらに、下位頚神経領域のMMTは3-4程度しかなく、利き手である右手指は日常生活に障害をもたらしていた。症状緩和のために、タペンタドール50㎎およびミロガバリン10㎎を開始した。初診2日後には入院のうえCT下肺生検を行い、扁平上皮癌の診断となった。同月18日には放射線腫瘍科外来を受診し緊急照射の適応と判断され、当院には放射線治療設備がないため、翌日より本院放射線腫瘍科に46Gy/23回予定で通院開始となった。独居であることもあり、全身状態確認のために緩和ケア外来には、毎週受診していただくこととし、症状コントロールを継続した。右手指・上肢の筋力低下による食事摂取困難に対し、栄養指導外来を紹介した。しかしY+2月初旬の当科外来受診時に、立ち上がり動作が困難なことからの肘部や下肢足関節部の摩擦による褥瘡が確認されたため、直ちに皮膚科に診察を依頼した。皮膚科では創処置とともに、患者支援センターを通じての特別訪問看護指示によって、自宅で処置を継続することが可能であった。症状コントロールを行いながら栄養状態を維持し、放射線治療の通院での照射完遂が可能となった。放射線治療後のCTでは、腫瘍縮小効果が確認され、初診から3ヶ月後に化学療法目的で入院し、薬物療法を開始した。治療効果は認められ、疼痛は軽減し、右上肢の浮腫も改善傾向であり、治療継続中である。

【考察】

パンコースト腫瘍は、早期発見が困難であり、治療困難な状態で発見されることが多い。治療をより迅速に行うためには、強力な治療を行うことが最も大切なことは論を待たないが、患者の生活環境・実態を正確に把握し、全身管理をしっかり行うことで治療効果を最大限に挙げることができる。本症例が、初診当日から症状コントロールを開始し、8日めで迅速に治療開始が可能となり、スムーズに経過できていることは、院内の強力な連携体制によるところが多いと思われる。

【結語】

進行したパンコースト腫瘍患者において、院内の強力な連携体制で迅速な治療を行うことが可能であった。