キクチ ヤスヒロ
  菊池 保宏
   所属   医学部 医学科(東京女子医科大学病院)
   職種   助手
言語種別 日本語
発表タイトル 心尖部へ血行性転移した腎細胞癌の一例
会議名 日本超音波医学会第90回学術集会
主催者 日本超音波医学会
学会区分 全国規模の学会
発表形式 口頭
講演区分 一般
発表者・共同発表者◎菊池保宏
発表年月日 2017/05/27
開催地
(都市, 国名)
宇都宮市
概要 症例は67歳男性.右腎細胞癌に対して右腎摘出術を施行した患者で,4 年後に腎細胞癌肺転移の診断で右肺腫瘍切除術を行っている,その後,腎細胞癌肺転移を疑う腫瘤が出現したため,合計 3 回の経皮的ラジオ波焼灼療法を施行した.さらに左腎臓への腎細胞癌転移で左腎部分切除術,腎細胞癌の脳転移疑いでγナイフ施行歴がある.今回,経過観察で施行した血液検査で肝機能障害を認め,腹部 CTを施行したところ,肝臓および膵臓に占拠性病変を認めた.ERCPを施行し病理検査の結果,腎細胞癌の肝転移と膵臓転移が疑われ手
術方針となった.術前精査での FDG-PET で心臓への集積を認め,経胸壁心エコー図検査で心尖部に 2.4x2.4cm の占拠性病変認めた(図 1).胸部レントゲンでは明らかな異常所見はなかったが,心電図では下壁誘導で T 波の陰転化を認め,心臓 MRI では T1 強調画像で低信号の皮膜に包まれた高信号の心尖部腫瘤影を認めた.これまで腎細胞癌の多発転移をしているという既往や,ERCP での腎細胞癌肝転移の組織診断から,腎細胞癌の心臓転移が疑われた.本症例では画像上,下大静脈への腎細胞癌の進展はなく,肺転移病変との心外膜を通じた解剖学的接触もなく,血行性転移が最も可能性が高いと考えられた.心臓腫瘍では転移性腫瘍が原発性腫瘍の 20 - 30 倍の頻度で生じるとされており,原発腫瘍によって転移頻度は様々で 2.8-18.3%である.心臓への転移様式は主に 3 つの機序があり,悪性中皮腫や食道癌に代表される心臓周囲からの直接浸潤,悪性黒色腫に代表される血行性転移,腎細胞癌や肺癌に代表される下大静脈や肺静脈からの浸潤の 3 つである.腎細胞癌は 7.3%の頻度で心臓への転移をするとされており,腎細胞癌の 5-15%が下大静脈内へ進展し,その約 1%が右房内まで進展する.腎細胞癌の心臓への転移は下大静脈を介した機序がほとんどで,転移部位も右心系が多く血行性に左心系に転移する事は非常に珍しく,左室への血行性転移はこれまでの報告では7 例のみである.今回,血行性に心尖部に転移した腎細胞癌を経験し,貴重な症例と考え報告する.